スカンジナビアモデル
金融危機から始まった不景気は、まだまだ序の口らしい
世界中の政府が対策をうちだしているので、いずれ解決の方向に向かうのだろうが、既に得ているものを失うのは辛い
「小さな政府」で民間活力、といった方向は大きく修正されるだろう
当面は、政府の財政出動が必要だけれど、そのまま世界の政治の流れが「大きな政府」に向かう可能性がある
「小さな政府」の社会保障は自己責任が基本で、保険や年金も各自金融機関を選ぶことになるのだが、この金融機関が、歯止めなく欲ボケ投資を繰り広げ、破綻したあげく、税金注入ということになってる
「大きな政府」は高福祉高負担となる理屈なのだけれど、これが結構うまくいっている国があるのですね
このところ、フィンランドの教育制度やデンマーク関係の本を読んでいるのだけれど、参考になることが多い
デンマークは幸福度世界一、フィンランドは学力世界一、スウェーデンはノーベル賞、ノルウェイはロシア、サウジアラビアにつぐ石油輸出世界第3位
これらの国々は、社会福祉先進国としても世界最先端
スウェーデンは潜水艦用のスターリングエンジンなど軍事技術でも最先端で、海上自衛隊の潜水艦も導入している
なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか Amazon
幸福度世界一のデンマークが、どんなふうかというと、
億単位の医療費も国から全額支給される
出産費も葬式代も無料
教育費は無料
大学入試は無い
教師の裁量が大きく、国定教科書がない
マルバツ式テストが無い
大学生には生活費として月額10万円支給
食糧自給率300%
国王を尊敬し、国旗を誇りにしている
風力・太陽光・バイオマスなどでエネルギー自給率156%
など
けっこうづくし、なのですが、税金は高いのです
つまるところ、国民が自分の国を信頼してないと、こうはいきません
税の負担率でいうと60%くらいは払っているようですが、これ、過半数以上ということで、労働が、自分の生活の為でなく、国家の為であるという意味です
普通に言って、国民総公務員ですね
まあ、私利私欲が最優先する社会より、ましな気もしますが
保険や年金、教育費を個人の自己責任で負担するのではなく、高率の税金を払い、国家が保障します
それでいて、高度の民主主義が実現されています
これをスカンジナビアモデルと言うらしいです
これが、脱線してしまった資本主義と拮抗する、新たなモデルかなぁ
ちょいと調べてみましたが
デンマークのGDP
$311.9 billion (2007 est.)
歳入$170.6 billion
歳出$156.8 billion (2007 est.)
フィンランドのGDP
$245 billion (2007 est.)
歳入$62.02 billion
歳出 $58.16 billion (2007)
ノルウェイのGDP
$391.5 billion (2007 est.)
歳入$226.3 billion
歳出$158.7 billion (2007 est.)
スウェーデンのGDP
$455.3 billion (2007 est.)
歳入$249.1 billion
歳出$233.5 billion (2007 est.)
スカンジナビア諸国では、フィンランドを除いて、GDPの半分以上の国家予算規模なんですよ
日本を同じ統計でみると
GDP
$4.384 trillion (2007 est.)
歳入$1.462 trillion
歳出$1.567 trillion (2007 est.)
金額は大きいのですが、先ず赤字経営で、GDP比では、歳入自体が少ないのです
一人あたりでデンマークと比較すると、
デンマーク一人当たり歳出
$156.8 billion /548万人で約28,000ドルになります
日本は$1.567 trillion /12700万人で一人当たりの歳出は12,330ドル程度となります
まあ、デンマークは一人当たり日本の倍以上の金を、国民に使っていると
デンマークをお手本に、日本も幸福度をアップする、ということになると、税金は倍にして、支出も倍ということでないと、実現できないということになりますね
デンマークでは出来ているわけで、日本も出来る可能性はあるわけですが、やっぱり、国民が国を信頼して、国は国民のことを心配してないと、こうはいかないのです
悲しいかな、これが一番難しい
増税を唱えて、選挙で勝った政権はありません
日本の貯蓄は世界有数で、1500兆円ほどありますが、これ、将来の不安への貯えであり、老後の心配、病気になった時の備え、子供の学費など、なくてはならない貯金なのですが、この金を、税金として国に差し出し、国は徹底的に社会保障を充実させる、と
保険会社や銀行でなくて、政府を頼りにする、ということですね
そんなことが、日本人にできますかね
スカンジナビアでは、普通なんですが
根底にキリスト教の博愛の精神がある、という説もありますが、キリスト教国は他にもいくらもあるわけで、それが全てということでもないでしょうが、大事なところですね
仏教国は、恥ずかしいな
教育の問題ひとつとっても
マルバツ式の偏差値教育は、大量生産の規格品は作れるのですが、これからの先の読めない時代を生き残るのは難しい
なんといっても、教師が答えを知っていて、生徒は答えを知らず、すでにある答えの理解度を評価するのが点数主義の偏差値教育です
生徒は、絶対に、先生以上になりません
これからは、すでにある知識を組み立てて、最善の方法を見つける能力が必要なのです
知識の習得を点数で競う勉強ではなくて、創意工夫を育てる教育でなければ、未来には対応できません
で、それをするには、教師の質、少人数教育、時間をかけた授業など、金がかかると
国民すべてに、高度な創造力をつける教育をいきわたらせるには、スカンジナビアモデルが、今ある回答であると
まあ、日本は、好むと好まざるとにかかわらず、そっちに向かうしかないなぁ