寺院の統廃合

白浜ワールドサファリ

白浜で和歌山の天台宗の住職が集合して会議があったのですが、注目された議題に、「寺院の統廃合」がありました
要は、リストラですが、この先、全国で寺院数が半数になるかもしれない、という衝撃的な内容でした
数は衝撃的なのですが、実態は、住職のいない無住寺院が半数くらいありますから、住職のいない寺を廃止すれば、話は成り立ちます

じゃあ、今はどうなっているかと言えば、兼務しているわけです
天台宗の場合、兼務は三ヶ寺までと決められています
兼務数の決まりのない宗派もあって、一人で7つも8つも寺の住職をしている場合もあります

で、これ、兼務には兼務の必然性があって、お墓がある、仏像がある、お堂がある、といった理由で、経済的に成り立たない寺でも、いきなり廃止することはできないのです

うちの寺は、檀家は10軒しかありません
この春に7年前に葬式をした人の七回忌の法事がありますが、この人の葬式が最後で、あと葬式をしてませんね
まあ、葬式では成り立たない寺です
でも、本堂・塔・門と国宝で、境内1万5千坪は国史跡ですから、経営できないから、はいやめます、というわけにはいきません
なんとかしなければなりません

住職がいる寺でも、お寺だけでは生活出来ないのは珍しくありません
よくあるのは学校の先生、公務員などをしながら、週末法事をし、葬式の時は有給休暇をとる、といった兼業寺院です
それでも、仕事を休んで、自分の寺の仕事をするなどということは、今日、なかなか許されることではありません

寺院の合併、統廃合の手順が整備されて、やりやすくなったら、急速に統廃合が進むんじゃないでしょうか
お墓は移転し、仏像は売却するか引き取ってもらい、お堂は撤去し、跡地を売却し、宗教法人を解散すると

天台、真言、浄土、浄土真宗、曹洞、臨済、日蓮といった伝統宗派は、全国津々浦々に寺がありますが、その半数は、経済的に自立できない寺院であるとみて、大外れではありません
新興宗教は増えているのですが、経済効率のいい、都市部で増えているだけです

農村、漁村、山間部の小集落にも伝統宗派の寺院があります
それが、日本文化であり、日本人の骨肉であるのですが、維持するにも限界が迫ってきています

じゃあ、どうして、今まで成り立っていたそれらの寺院が成り立たなくなってきたのか、と言うと
先ず、農地解放の時に直接の耕作地以外を所有できなくなったのと、生活費の高騰でしょうか
それと、檀家が自分の生活に追われ、お寺にかけるお金が少なくなってきた
信仰心が希薄になってきたというのは、よく言われますが、基本的には、経済的に皆、切羽詰まってきているということじゃないですか
生きてくだけでも、税金、保険、年金、電気、水道、ガスと、なにもしなくてもお金がかかりますからね
お寺は、お堂や仏像の修理をしなければならないし、衣も必要で、本山への納金もあるし、第二次大戦の時は兵役もあったし、住職の給料には所得税が当然かかります
寺院の後継者になったら、世間並みの生活ができない、ということになれば、なり手はいなくなりますよ

東京など大都市の人は、お寺さんといえば、金持ち、と思っている人も多いと思いますが、全国的に見れば、金持ち寺など、ほとんどないのです



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